2010/06/22

[書評]放課後プレイ2

黒咲練導 著「放課後プレイ2」

自分を嫌いな少女は、誰かの想いに報いることはできるのでしょうか?



まず、始めに知っておかなければならないことがある。
この作品は「放課後プレイ」の2巻ではない。
放課後プレイ2という作品だ。
ドラクエ1とドラクエ2の関係のようなものだ。
続編であっても、続刊ではない。
世界はは同じだが、主人公は違う。
まずはその点だけ頭に入れておかないと、買ってガッカリ!みたいなことになりかねない。

さて、本題。
前作である放課後プレイの時には、密室で行われる、偏屈男とツンデレのいちゃいちゃを楽しむものだと言った。
しかし、今作はその路線はうっすら残っているものの、テーマとしてはだいぶ違う。
今回は、漫画研究会で一人活動しているヒロインと入部してくる男の話し。
漫研が前作と同じように密室の舞台になるのだが、前作と違い、この二人は出会うところから始まる。
女性はコミュニケーション下手、男はズカズカとそこに入っていくタイプ。
最初は嫌がりつつも、徐々に打ち解けて、、、というベタな展開になっていくのだが、実はそこがメインのお話でもない。

ヒロイン側の視点で進む物語は、そんなに綺麗ではない。
こんな自分が好きではない。
そんな自分が人から好かれている訳がない。
そう思っているヒロイン。
ちなみに、この部分が作者の凄いところなのだが、あえて本当に美少女ではないヒロインを採用している。これが妙なリアリティと親近感を持って僕には響いてしまった。

徐々に仲が良くなってくる2人。
部室に一人で漫画を書くことに寂しいと感じ、誰かになにかを伝えるという行為に楽しさを感じ、何よりもそんな自分が満更でもない。

しかし、そんな微笑ましさ溢れる日常は唐突に終わる。
あまりにも個人的な理由で。
あまりにも子供じみた理由で。
あまりにも人間らしい理由で。

この先は、御自身の目で是非御覧になっていただきたい。

僕は自分が嫌いだった期間がかなりの長期に渡りあった人間なのでこの少女の気持ちが手に取るようにわかる。
なぜそういう行動になるのか。

それは不器用だとかっていう綺麗なもんじゃない。
圧倒的にどうしようもない劣等と卑怯と黒い感情だ。
他人に対して一方的に抱き、自己完結し、そして逃げ出す弱い心だ。


そんな彼女と男の子がどう物語に決着をつけるのか。
初めて本音でぶつかる男女のその先にいったいどんな答えが待っているのか。
是非、自身の目で見てみて欲しい。

また、物を作るということにたいして、作者のイズムのような物が垣間見れる作品なので、そういう見所もありますよ。


放課後プレイ2。
オススメです!

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